「汚名返上」「名誉挽回」という言葉は何かとセットで使われることが多いですが、これらの意味・使い方についてはご存知でしょうか。
また同じような言葉で、両者の下2つの漢字を入れ替えた「汚名挽回」「名誉返上」という言葉も聞きますが、こちらに関しては誤用ということで知られてますが、実際のところはどうなのでしょうか。
この記事では以下の点に焦点をあてて見ていきたいと思います。
- 「汚名返上」「名誉挽回」の意味・使い分け
- 「汚名挽回」「名誉返上」は誤用なのか
- 「汚名返上」「汚名挽回」の使用率について
「汚名返上」「名誉挽回」の意味

「汚名返上」とは
「汚名返上」とは新たな成果・功績を挙げて、過去の失敗・不名誉な評判を打ち消すことという意味があります。同じよう意味に「汚名をそそぐ」という言い回しもあります。
「返上」という言葉にはそのまま「返す」という意味があり、「汚名」がついてこれを「返す」という意味ですね。
「汚名返上」の明確な起源については分かっていませんが、不祥事を起こした国会議員や芸能人を揶揄する言葉として使われたのが始まりとされています。
「名誉挽回」とは
「名誉挽回」とは1度失った・傷つけられた名誉・信頼・失敗を再び取り戻すことという意味があります。
「挽回」には「失ったものを取り戻して元に戻すこと」という意味があり、「名誉」がついてこれを「取り戻す」という意味ですね。
「名誉挽回」は主に信用・信頼を取り戻すときに使うことが多く、信頼関係を築いていくにはそれなりの時間を要しますが、失ってしまうときは一瞬です。取り戻すの一朝一夕とはいきませんが、「名誉挽回」するんだという意気込みがとても大切ですね。
「汚名返上」「名誉挽回」の使い分け

「汚名返上」「名誉挽回」、意味に関してはほとんど一緒という認識で問題ないとは思いますが、よく考えると少し意味が違います。どうしても意味が似通っているので混同して使ってしまいがちですが、使い分けには気をつけたいですね。
- 「汚名返上」
→新たな成果・功績を挙げて、過去の失敗・不名誉な評判を打ち消すこと - 「名誉挽回」
→1度失った・傷つけられた名誉・信頼・失敗を再び取り戻すこと
「汚名返上」は過去に何らかの「汚名」になるようなものがある前提のときに使い、「名誉挽回」は過去に「名誉」となるようなものがある前提のときに使い、この前提があるかないかで判断して使い分けることができます。
しかし、文章の見方によっては「汚名返上」とも「名誉挽回」とも捉えることができるものもあります。
毎年毎年その大会で優勝している競合校が、先の大会では初戦敗退という結果になったが、次の大会では見事に優勝しチャンピオンの座に戻ってきた、ということであれば「名誉挽回」と言うことができますし、初戦敗退という「汚名」でもあるので、「汚名返上」とも言うことができます。
文章によっては「汚名返上」とも「名誉挽回」とも捉えることができるので注意です。
「汚名挽回」「名誉返上」は誤用?

「汚名返上」「名誉挽回」に並んで同一視される「汚名挽回」「名誉返上」。こちらは誤用ということで知られていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
この「汚名挽回」誤用説はいつ頃から発生したか。私の知るかぎりでは、1976年の『死にかけた日本語』(英潮社)の指摘が早いです。それまで「汚名挽回」は普通に使われていたのに、これ以降、誤用説が強まり、今は肩身の狭い立場になった。この本はけっこう影響力があり、やっかいな存在です。
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) May 1, 2014
省堂国語辞典の編集委員の経験がある飯間浩明氏によると「汚名挽回」は誤用ではないそうです。
「挽回」には「元に戻すこと」という意味があるので、「汚名挽回」は汚名がある状態から元に戻すという意味で、誤用ではないというものですね。
また、「名誉返上」は漢字の意味で考えると手に入れた名誉を返上する、というそのままの意味ですが、これも現実では起こりうる現象です。何かで賞を受賞した後にそれが盗作だと判明、ノーベル賞を受賞したが何らかの理由で辞退した、などが「名誉返上」にあたります。
なので、「汚名挽回」「名誉返上」ともに誤用という認識がされていますが、見方・使い方によっては誤用ではないのかもしれませんね。
「汚名返上」「汚名挽回」の使用率について

文化庁が毎年行う「国語に関する世論調査」の結果についてという16歳以上の男女2000人を対象とする日本人の国語力を問うもので、平成16年度では「汚名返上」「汚名挽回」について触れられていました。
- (a) 前回失敗したので今度は「汚名挽回」しようと誓った
- (b) 前回失敗したので今度は「汚名返上」しようと誓った
結果:(a) →44.1% (b)→38.3% その他17.6%
一般的に誤用だとされている「汚名挽回」の方がもとの「汚名返上」よりも5%程多く使われているということでした。
「汚名返上」「名誉挽回」の意味・使い分けは?「汚名挽回」は誤用?まとめ

- 「汚名返上」
→新たな成果・功績を挙げて、過去の失敗・不名誉な評判を打ち消すこと - 「名誉挽回」
→1度失った・傷つけられた名誉・信頼・失敗を再び取り戻すこと - 一般的には誤用とされている「汚名挽回(汚名がある状態から元に戻すという意味)」「名誉返上(手に入れた名誉を返上するという意味)」については見方・使い方によっては誤用ではない
「汚名返上」「名誉挽回」「汚名挽回」「名誉返上」について見ていきました。
一般的に誤用とされている「汚名挽回」「名誉返上」は見方・使い方によっては誤用ではないようですが、「汚名挽回」はともかく「名誉返上」という使い方はあまりしないので、日常会話の中で使うと少しややこしいということが起こってしまいそうですね。
基本的には「汚名返上」「名誉挽回」「汚名挽回」を使うのが良いのかなと思います。